「うちの商品、海外で売れるかもしれない」
そう感じた瞬間が、輸出戦略の第一歩です。
でも、勢いだけでは続きません。
国内とは異なるルール・文化・流通の中で成功するためには、計画的な戦略=“売れるための仕組みづくり”が必要です。
本記事では、初めて海外展開を検討する中小食品メーカーの方へ、輸出戦略づくりの全体像と具体的なアクションをお届けします。
なぜ輸出前に「戦略」が必要なのか?
「海外で売れたらいいな」
「問い合わせが来たから送ってみようか」
そんなに現実は甘くありません。
食品輸出では…
- 輸出コストが想像以上に高い
- 原材料やパッケージが規制に引っかかる
- 想定していた味やサイズが受け入れられない
…という壁が多く立ちはだかります。
だからこそ、「どの国で」「どの商品を」「どの形で」売るかを戦略的に設計することが重要なのです。
何をリサーチするべき?──3つの視点で調べよう
① 現地の顧客の想定
- どんな味が好まれるか?
- 食べるシーン(家庭用/業務用)や量の感覚は?
- パッケージは見た目重視か?機能性重視か?
実際に商品を購入して使う方は、現地に駐在する邦人の方もいれば、日本食レストランが業務用に仕入れることもあります。
理想は現地の人が、好んで日本の商品を買ってくれることですけどなかなか簡単ではありません。
特に地域によって「味」が重視されるところもあれば、「ボリューム」がうけることもあります。一方で、「見た目の鮮やかさ・小分け包装」が好まれることもあります。
例えば、日本の魚肉ソーセージは1本が太く量も多いので野菜と炒めるなど料理にも用いられますが、地域によってはお酒のつまみとして、日本よりも細くスティック状が望まれたりもします。
同じ商品でも用途が変わりあわせて、容量やパッケージを見直すことを前提にしておくことが必要です。
② 現地の競合
- 同じような商品はすでにあるか?
- 価格帯は?内容量は?パッケージの雰囲気は?
③ 現地の流通チャネル
- アジア食品スーパー
- 現地の方が行くメインスーパー
- ECサイト
- レストラン
- 輸入業者を通すのか?直接契約か?
リサーチの方法:まずは「できること」から始めよう
情報は探せばある――けれど、どこを見ればいいのかわからない。
そんな方のために、リサーチ方法を2段階に分けて紹介します。
🔎 1次情報(現場からの生の声)
- 海外展示会での反応
- 現地飲食店でのヒアリング
- バイヤーやコーディネーターとの会話
📚 2次情報(データやレポート)
- JETROの国別レポートや食品輸出相談窓口
- 商工会議所、農林水産省の公開資料
- 海外向けの販売データ
このような情報も活用しリサーチが可能です。
さらに今はとても便利で、日本にいながらSNSを見ると各国の事情をなんとなく分かるようになっています。簡易の翻訳機能もあるので、日本にいながら海外の投稿の表示回数や反応も見ることができます。
大リーグ・ドジャース専属の地元放送局「スポーツネットLA」女性リポーターのキルステン・ワトソンさんのInstagram。この投稿はドリンクのタイアップ記事のようです。
各地域で使われる主なSNS
地域 | 主力SNS | 備考 |
---|---|---|
中国本土 | WeChat, RED | REDは女性層に強い |
香港 | Facebook, Instagram, YouTube | Instagramはビジュアル系グルメに強い |
台湾 | Facebook, Instagram | YouTubeのレシピ動画も人気 |
米国 | Instagram, Facebook, TikTok, YouTube | 様々なSNSが活用されてる |
タイ | Facebook, LINE, Instagram | Instagramがグルメに強い |
インドネシア | Instagram, Facebook, TikTok | 都市部では TikTok+Instagram/地方ではFacebook |
ベトナム | Facebook, TikTok, Zalo | Facebookが軸 |
EU全体 | Instagram, Facebook, TikTok | Instagram + Facebook が基本。若年層対策にTikTok |
英国 | Instagram, Facebook, YouTube | Instagram+Facebookがメインで、若年層はTikTok。 |
韓国 | Instagram, YouTube, Naver | Instagramが日常使いの主力SNS。 |
シンガポール | Instagram, Facebook, YouTube | Instagramメイン、FacebookとYouTubeも併用 |
マレーシア | Facebook, Instagram, WhatsApp | Facebookが強い |
「売れる国」をどう選ぶ?──マーケットインで考える
マーケットインとは、「売りたい商品」ではなく「求められている商品」をベースに戦略を組む考え方です。
選定時のチェックポイント:
視点 | 質問例 |
---|---|
規制適合性 | 添加物・表示・成分に問題はないか? |
食文化の親和性 | 味・形・見た目は現地文化と合うか? |
成長性 | 市場は伸びているか?競合は激しすぎないか? |
流通適性 | 輸送・温度管理ができるルートがあるか? |
商品を見直す:輸出には“そのまま”では出荷できない
ローカライズの視点
日本語のパッケージでそのまま出荷できるということは稀なケース。
パッケージの変更、容量の変更など柔軟な対応をできるようにすることも検討しましょう。
- 味付けを現地に合わせる
- パッケージ表記を多言語対応
- 必須表示が日本と異なるので対応する
輸出価格の決め方:利益を残す価格とは?
価格は“後回し”にしがちですが、最初に決めるべき要素の一つです。
少なくとも主要港(空港)の倉庫までの納品価格、最低ロットは決めておきましょう。
またパッケージを変える必要がある場合の金額、最低ロットも考えておくとよいです。
為替リスクも考慮
円建てで交渉にするか、現地の通貨建てで提示するのかも最初に決めておくべきです。
相手が輸入することを決定し、さらに発注して代金を受け取るまでにはまだまだ時間がかかります。
最初の見積提示してから半年以内に代金を受け取ることは稀で、1年くらい余裕を持った提案をしなければいけません。
はじめのうちは、日本の主要港の倉庫まで届ける価格を円で提示するとよいです。
FOB:(TOKYO)
✅ まとめ:あなたの商品は、どこで・どんな形で売る?
- 勘ではなく「市場データ」と「現地目線」で戦略を立てる
- 自社商品に合う国を探すのではなく、国に合わせて商品を変える前提の心構え
- 輸出は「受け入れてもらう」ための工夫の連続になる
▶ あなたの商品、どこに売れる?まずは診断から
初めての輸出を検討している方へ。
「この商品、どの国なら売れそうか?」「規制でひっかからないか?」――そんな不安に応えるのが、当社の輸出スクリーニングサービスです。
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